シャインマスカットのホルモン濃度の違いが食味に与える影響

栽培について

種無しシャインマスカットの栽培では植物ホルモンを使用しますが、濃度を変えて栽培してみました。

その違いが味や食感などにどう影響するのかを調べてみました。

 

6通りに濃度を変えてお客さんに召し上がってもらい、それぞれアンケートに回答してもらいました。

その結果かざっくりとわかったことは、「人によって好みは異なる」ってことです。この濃度でやるのが良いとう結論は出なかったです。

ちなみに現在の種無し葡萄の栽培に使っているホルモンというのは、植物自身が作り出しているホルモンです。それを外から与えることで、種無しで大粒の葡萄にしようというものです。

 

ここから先は葡萄農家さん向けの専門的な内容となります。

実験

一般的な種無しぶどうの栽培では、ジベレリン処理を2回行います。

1回目は満開~満開3日後
2回目は満開約2週間後

1回目にジベレリンに加えて、フルメットを加用することが多いです。

今回の実験では、1回目の処理時のジベレリンとフルメットの濃度を6通り試してみました。

①ジベレリン12.5ppm フルメット0ppm
②ジベレリン12.5ppm フルメット2.5ppm
③ジベレリン12.5ppm フルメット5ppm
④ジベレリン25.0ppm フルメット0ppm
⑤ジベレリン25.0ppm フルメット2.5ppm
⑥ジベレリン25.0ppm フルメット5ppm

 

試験に使用した樹は2017年4月に5BB台木を植えて、2017年7月にシャインマスカットの穂木を緑枝接ぎしたものです。

2021年で5年目の樹となりますので、まだ大人の樹をは言えないと思います。大人の樹で同じ試験をするとまた違った結果になるかもしれません。

本来はすべて同じ樹で行った方が良いと思われますが、簡略化のため数本の樹を使って試験しました。短梢栽培で通りごとに濃度を分けて試験しました。

 

収穫は9月25日と28日に2日に分けて行いました。
収穫当日にあらかじめ6房セットで予約して頂いていたお客さんへ発送しました。

 

お客さんには6房それぞれの、「甘味・酸味・渋味・香り・味の濃さ・皮の厚み・皮残り」この7項目を5段階で評価していただき、また一粒の重さも計測していただきました。

最後に6房の中から一番好きな房をあげてもらいました。

結果

結果をお伝えしていきますが、大人ではない樹(5年生)、評価は樹による差・個体差があるものとしてとらえてください。

見た目の違いは?

お客さんの評価の前に見た目で感じたことをお伝えします。

ジベレリン濃度の違いは、着粒肥大に違いがみられた

12.5ppmの方は着粒が少なく摘粒が楽だった。天候や栽培によって粒足りなくなる可能性があると思う。25ppmの方が肥大が良かったが、大きな差ではなかった。

 

フルメット濃度の違いは、色の違いが明確に出た。

0ppmと2.5pmでは黄色っぽくなったが、5ppmは前二つに比べると明らかに緑が濃かった。(この年の傾向だが全体的に黄色み強かったので、5ppmでも気になるような緑ではなかった。)

意外と肥大にはそこまでの違いがみられなかった。

 

お客さんの評価

表にまとめましたので、ご覧下さい。

9月25日収穫(前半)と9月28日収穫(後半)この二つを別に集計してみました。それぞれ1・2・3・4・5の5段階で評価していただきました。

①~⑥というのは上でお伝えした濃度の番号と同じです。甘味・香り・濃さは強い方が5、酸味・渋味は弱い方が5、皮の厚み・残りはそれぞれ薄い・気にならない方が5となります。

赤字は各項目の中で一番数値が高かった房
青字は各項目の中で一番数値が低かった房

 

前半の方の結果はわかりやすいものとなっています。
ジベレリン・フルメットともに濃度低い方が数値が高くなっています。一番好みの房は①(ジベレリン12.5 フルメット0)でした。

後半はなんとも評価しづらい結果です。
甘味・酸味・渋味に関しては①が一番高く、皮の残りは⑥が一番良い結果となりました。好みの房は1位が⑥、2位が①という真逆の房がワンツーを取りました。

粒の大きさに関しては、前半・後半ともにおおむねホルモン濃度が濃い方が肥大するという結果になりました。(少し違うところもありますが)

 

まとめ

上手くまとまってないですが、わたしの感想も含めたまとめです。

 

今回の結果を見て、一概にこうした方が良いという結果は得られませんでした。

前半と後半の結果の違いが大きすぎたので、どう評価してよいのかわからないです。

後半は濃度が一番高いものと低いものがワンツーを取ったので、好みの違いがあるんじゃないかと思います。

皮が気になるって声はよく聞くので、そこに注目してみると、前半・後半ともに粒が一番小さかったものが皮残りが気になるという結果が出てます。

粒が小さいのは皮が気になるというのは、私も以前から感じていたことです。

 

ただ、小さくても十分甘いシャインマスカットは美味しいという評価もいただいています。ですので、あらかじめ小さいですけど美味し出すよって謳っていれば、総合的に美味しいという評価をしてもらえるのではないかと思います。

 

それと後半の⑥の結果をもう一度見てください。⑥は甘さ・香り・濃さで一番低い結果が出ましたが、一番好みの房では1位なのです。これみると本当にわけわからないですが、絶対的な粒の大きさも重要なのかもしれません。あと、さっぱりしたシャインマスカットが食べたいって人も多そうです。

 

前半・後半の二つの結果を見てまとめると、前半はホルモン濃度の薄いシャインマスカットが1位になったのに対し、後半は一番濃いのが1位になりました。

このことからシャインマスカットは好みが分かれる葡萄なのかもしれません。甘ければ良いってことではなさそうな気がします。でも甘ければ良いという人もいます。

 

お客さんのコメントで複数あったものとしては、
・皮が気になる
・甘すぎた
・やっぱり甘いのが好き
・粒が小さい

甘さの度合い、粒の大きさ、皮
このあたりが評価のポイントとなるんじゃないかと思います。

結果をふまえた今後の予定は?

今回の試験では一概にこの濃度が良いという結果は出ませんでした。

わかったことは、「人によって好みは異なる

ということはあらかじめ濃度の違うものを2通り作ってみるのも良いのかなと思いました。

 

十分甘いのが好きな人とさっぱりしたのが好きな人がいるのであれば、最初から2種類作るのもありかなと。

それと、まだやったことのない濃度も試してみたいと思っています。

とりあえず実験してみたいのは、
1回目 12.5ppmー2ppm
2回目 12.5ppmー1ppm

2回目もフルメットを入れてみる。そしてジベレリンは薄くする。

 

今年1回だけの実験ではまだまだ結論は出ないので、今後もいろいろ試してみたいと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました

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